遙かなるマチョジニア

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FAKE感想(ネタバレほぼなし) マスメディアは情報を四捨五入する

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森達也監督の最新ドキュメンタリ映画「FAKE」。

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ゴーストライター事件以降、ひっきりなしにテレビに出まくっては、 時の人となった新垣隆氏、他方でメディアから総バッシングを浴びせられ、 笑いものにされた佐村河内守

マスメディアでは、新垣隆氏が完全に善で佐村河内守が悪という構図が 完全に出来上がっていました。

ゴーストライダー事件で大きく論点になっていたのは、

  • 本当は耳が聞こえる
  • 作曲できない

の2つかと。

本作でも、この2点に切り込むのですが、これがかなりのサスペンスなんです。 本当に耳が聞こえないならば、絶対に反応しては行けないようなシーンが幾度と無く出てきます。 例えば、誰かが訪問してきたり、森監督が佐村河内守に声をかけたり。

そういうときに、佐村河内守は反応するのか・・・!

かなりのハラハラドキドキです。これは、ドキュメンタリじゃないと味わえない緊張感です。 サスペンスは随所に散りばめられているんですが、その緊張感をホグシてくれるが佐村河内守本人。佐村河内守はかなりキュートなんですよ。

新垣隆氏がテレビに出てその風貌や振る舞いから笑いものにされてましたけど、 個人的には佐村河内守のほうが愛着が湧きます。

夕食で奥さんがハンバーグを作るんですが、「頂きます」をして目の前にホクホクのハンバーグがあるわけですよ。 それを見ながら、コップになみなみ無調整豆乳をついで、一気に飲み干す。これを数回繰り返した後に、ハンバーグを食すんです。

一体なぜ?!すごい奇妙な風景ですよ。で、森監督は聞くわけです「なんでそんなことしてるんだ」と。

佐村河内守は答えます。

「豆乳が好きなんです」

それだけ!たったそれだけの理由なんですよ。何にも深い意味は無いんです。

他にも、中立的な外国人のジャーナリストが論理的に質問するシーンがありました。 「新垣隆氏は、音源もたくさんあるし、作曲できる証拠が山ほどある。でもあたな(佐村河内守)は、それがない。もし作曲ができるなら、この場でピアノを弾いて欲しい。」

この問に佐村河内は「ピアノは捨ててしまいました」と答えます。

ジャーナリストが「なんでだ?」と聞くと、佐村河内は答えました。

「部屋が狭くなるから」

ほんと、それだけなんですよ。これは作曲ができないのを隠すために適当な理由をつけてるのか?!とも思いますけど、 この映画を観てると、そうとは思えなくなっちゃいます、本当にこの人、ただ狭くなるから捨てちゃったんだろうなって思えるんですよね。

なんというか、心底無垢なんですよ。その姿に笑いが溢れてしまいます。

で、結局、

  • 本当は耳が聞こえる
  • 作曲できない

この疑問について、それはこの作品を観れば判断はできると思います。 ただ、この作品の出口は、「献身的な奥さん」がキーになります。

森監督は、奥さんが出てくれなかったら、この映画は撮らなかったと言っています。 この映画のラストは口外禁止になっていますが、 それは、大どんでん返しがあるから、というよりも、 そう思い込んで観ていたテーマが、ラストにガラリと変わるから、と言った方が良いかもしれません。

本作を観て、佐村河内守氏への見方が180度変わりました。 とうかもともとそこまで興味がなかったんですが、完全に興味がわきました。

今回の事件について、マスメディアは善悪をはっきり描いています。 でも本当そんな簡単に分けれるはずがないんです。マスメディアは情報を四捨五入します。 仮に佐村河内守が善としてマスメディアに扱われていたら、本人の生活も全く違った形になっていたでしょう。

数字のために一人の人生を弄んでしまう、このことをマスメディアは認識すべきだと思います。

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