ブラック・スワン 感想
「わからない」ことを「わかる」ことで見えてくる本質があるようです。
- 作者: ナシーム・ニコラス・タレブ,望月衛
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2009/06/19
- メディア: ハードカバー
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- 作者: ナシーム・ニコラス・タレブ,望月衛
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2009/06/19
- メディア: 単行本
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目次
- 【下】
- 第11章 鳥のフンを探して
- 第12章 夢の認識主義社会
- 第13章 画家のアペレス、あるいは予測が無理ならどうする?
- 第3部 果ての国に棲む灰色の白鳥
- 第14章 月並みの国から果ての国、また月並みの国へ
- 第15章 ベル・カーブ、この壮大な知的サギ
- 第16章 まぐれの美
- 第17章 ロックの狂える人、あるいはいけない所にベル型カーブ
- 第18章 まやかしの不確実性
- 第4部 おしまい
- 第19章 半分ずつ、あるいは黒い白鳥に立ち向かうには
- エピローグ
- 謝辞
- 訳者あとがき
- 参考文献
- 注解
- 用語集
- 索引
そもそも、ブラックスワン(黒い白鳥)とは何か?(Amazon.co.jp紹介文より)
むかし西洋では、白鳥と言えば白いものと決まっていた。そのことを疑う者など一人もいなかった。ところがオーストラリア大陸の発見によって、かの地には黒い白鳥がいることがわかった。白鳥は白いという常識は、この新しい発見によって覆ってしまった。「ブラック・スワン」とは、この逸話に由来する。つまり、ほとんどありえない事象、誰も予想しなかった事象の意味である。
著者は、この黒い白鳥について3つの特徴を挙げています。
- 予測できないこと
- 非常に強い衝撃を与えること
- いったん起こってしまうと、いかにもそれらしい説明がでっち上げられ、実際よりも偶然にはみえなくなったり、あらかじめわかっていたように思えたりすること
著者は黒い白鳥の生息区域を「果ての国」。 その他、つまり平均値の周辺を大半数が占めるような分布の仕方を「月並みの国」と呼んで区別しています。
月並みの国
・ベル型カーブ(ガウス分布) 例:人の身長、体重
果ての国
・べき乗則 例:グーグルの成功、9.11
著者が指摘する問題は、果ての国で起こる事象を、月並みの国で起こると勘違いしてしまう点なのです。 その原因について下記のように示しています。
追認の誤り
自分が信じていることや、つくりあげたものを支持してくれる事例ばかり探すこと。講釈の誤り
互いに関連していたり、いなかったりする一連の事実に対し、それに合った説明やパターンをほしがる性質。物言わぬ証拠の誤り
歴史を見るとき、過程のバラ色の面だけが見えてしまい、全体が見えないこと。お遊びの誤り
偶然の研究をゲームやサイコロの狭い世界に押し込めること。
例えば、
p.226-227
公平なコインがあると思ってくれ。つまり投げたときに表がでる確率も裏が出る確率も同じだ。 さて、九九回投げたら全部表だった。次に投げたら裏に出る確率はどれだけだろう?
この質問に対して、少しばかりの知識を持ってしまった人間ならば、 一回一回の結果は互いに独立だと考え、50%と答えてしまいます。
これがまさに、月並みの国の思考なのです。 ところが、果ての国での思考では、こうなってしまいます。
p.227
もちろん一%もないよ。コインには細工がしてあんだよ。公平なんてありえねえっちゅーんだ。
ところで、この黒い白鳥に対してどのように振舞えば良いのでしょうか。 本書では、下記のようなアドバイスが書かれています。 (詳細は本書を参照のこと。)
- いい偶然と悪い偶然を区別する
- 細かいことや局所的なことは見ない
- チャンスや、チャンスみたいに見えるものには片っ端から手を出す
- 政府が持ち出す、こと細かな計画には用心する
- 予想屋、株のアナリスト、エコノミスト、社会科学者、そういう連中とけんかしても時間の無駄
何はともあれまずは、本書を読んで黒い白鳥(わからない)の存在を認める(わかる)ことから始めましょう。